組織間リリース(ISR)とは?
組織間リリース(ISR:Inter-Structural Release)は、筋肉、筋膜、皮下脂肪、神経、靭帯など、身体の内部にあるさまざまな組織と組織の間に生じた癒着を、手技によって解放し、滑走性を取り戻す施術法です。
この技術は、広島国際大学医療技術学部の蒲田和芳教授によって開発されたもので、理学療法士をはじめとした医療従事者の間で注目されている、エビデンスに基づいた新しい徒手療法です。
私たちの身体は、筋肉や神経といった構造が何層にも重なりながら連動して動いています。本来であればそれぞれの組織が独立して滑らかに滑走することで、関節や筋肉の正常な動作が維持されます。しかし、日常生活での反復動作や姿勢不良、外傷、手術などにより、これらの組織が本来あるべき位置からズレたり、滑走性を失って癒着してしまうと、動きにくさや痛み、シビレなどの不調の原因になります。
組織間リリースでは、こうした癒着の有無を1ミリ単位で触診・評価し、必要な方向に必要な圧力を加えて、最小限の刺激で組織を剥がしていきます。従来のマッサージや矯正のような強く押すしたり、動かすアプローチとは異なり、組織と組織の関係性に着目した、非常に繊細で論理的な施術です。
この技術の特長は、筋肉だけでなく、神経の滑走不全や靭帯の癒着、瘢痕(手術跡)など、一般的なアプローチでは届きにくい深層組織にも対応できる点にあります。そのため、筋膜リリース、関節モビライゼーション、ストレッチング、運動療法などの手技では改善が見られなかったような、慢性疼痛や運動制限、術後の可動域制限などにおいても効果が期待できます。
フィジオリハは、蒲田教授が提唱する医学的評価に基づいた精密な治療という理念に基づき、単なるリラクゼーションではない原因を見つけて、再構築するための施術を提供しています。医療の現場で培った解剖学・神経生理学の知識と、繊細な手技によって、身体の本来あるべき動きを取り戻すことを目指します。
組織間リリースが効果を発揮しやすい症状
単なる筋肉の硬さやコリでは説明できない動きにくさ、詰まり感、神経症状にも有効で、病院や他の施術院では改善しなかった慢性症状にも対応可能です。
- 肩こり・首のこり・四十肩(肩関節周囲炎)
- 腰痛(慢性腰痛・ぎっくり腰・坐骨神経痛を含む)
- 膝の痛み(変形性膝関節症、O脚、関節の引っかかり感など)
- 股関節痛・股関節の詰まり感・開脚困難
- 手や足のしびれ・神経症状(滑走不全による神経圧迫)
- 姿勢不良(猫背、巻き肩、骨盤の歪みなど)
- 可動域制限(関節が曲がらない、伸びない、開かないなど)
- アキレス腱炎・足底筋膜炎・足関節周囲の痛み
- 術後の瘢痕(手術後の組織癒着による動きの制限)
- スポーツによる関節・筋肉の違和感(テニス肘、ランナー膝など)
- 呼吸が浅い、胸郭が動かないと感じる状態
- 原因不明の違和感・疲労感・倦怠感
他のマッサージや手技との違い
一般的なマッサージや指圧は筋肉そのものを緩めることを目的とし、カイロプラクティックや骨盤矯正は骨や関節の位置を整えることを主眼としています。一方で、組織間リリースは動きの悪さ、痛み、神経のしびれなどが起こる根本原因が、組織同士が本来あるべき動きを失ってくっついている=癒着していることにあるという前提に立ち、その癒着を解放するという、より解剖学的・運動学的・神経生理学的に高度なアプローチを取ります。
また、施術そのものも独特です。強い力を加えるのではなく、術者の指先で皮膚の下の層の動きを1ミリ単位で読み取りながら、必要な方向に微細にずらし、組織間の摩擦を解放していくため、身体に対する負担が非常に少なく、刺激に敏感な方や高齢者、術後の方にも安心して受けていただけます。
さらに、ISRはただ整えるだけでなく、整えたあとに動けるようにすることまで設計されています。これは、従来のリラクゼーションや部分的な矯正とは異なり、身体全体の動作や姿勢の連鎖、再発予防まで見据えた包括的なアプローチである点が、他の施術と大きく異なります。
つまり、組織間リリースとは、筋膜・神経・関節・筋肉などのつながりと動きの質に注目し、なぜその不調が起きているのか?という問いに対して、医学的な根拠をもとに応えることができる数少ない手技療法であり、根本改善と再発予防を両立する新しい選択肢と言えます。