猫背・巻き肩を根本から直す ~胸郭・肩甲骨・骨盤の連動から整える姿勢改善~
「猫背を直したい」「姿勢を良くしたい」「巻き肩で首や肩が重い」
そんな悩みを抱えている方は非常に多く、男女問わず共通する現代の姿勢トラブルです。
しかし、猫背や巻き肩は“背中が丸い” “肩が前に出ている”という見た目だけの問題ではありません。
根本には、胸郭(肋骨の動き)・肩甲骨・骨盤の連動が崩れた結果として生じる
「機能的な歪み」がその原因として隠れています。
■ 猫背・巻き肩は「胸郭の硬さ」と「肩甲骨のズレ」から起こる
猫背の方に多いのは、胸郭(胸のかご)が前方に落ち、
肋骨の動きが制限されて呼吸が浅くなっている状態です。
胸が縮こまることで、肩甲骨は外側に滑り、肩が内巻きになります。
この姿勢が長期間続くと、僧帽筋や胸鎖乳突筋、肩前方の筋膜に持続的なストレスがかかり、
肩こり・首こり・頭痛・手のしびれなどの症状に発展していきます。
実際に、整形外科や理学療法の研究でも、
巻き肩の人では胸郭の可動性が顕著に低下していることや、
肩甲骨の上方回旋・後傾角度が正常者より少ないことが報告されています(Ludewig et al., J Orthop Sports Phys Ther 2009)。
つまり、背中を伸ばす努力ではなく、
胸郭を動かせる状態に戻すことこそが本質的な改善なのです。
■ 「胸郭―肩甲骨―骨盤」の三位一体で考える姿勢
姿勢は、骨盤の傾きと胸郭の位置関係で決まります。
骨盤が後傾すると、胸郭が下がり、自然と猫背になります。
逆に骨盤が前傾しすぎても、腰椎が反り、肋骨が開きすぎて首や肩に負担がかかります。
また、肩甲骨は胸郭の上を滑る構造であり、
胸郭が動かないと肩甲骨も正しく動けません。
胸郭と骨盤を整えることで、肩甲骨が「正しい位置に戻る」のです。
■ フィジオリハでのアプローチ
猫背・巻き肩の改善には、単なる姿勢矯正ではなく、
「動きながら整える」ことが必要です。
フィジオリハでは、以下の4ステップで根本改善を図ります。
① 評価
まず、立位・座位・腕の挙上動作をチェックし、
胸郭の可動性(前後・側方・回旋)、肩甲骨の動き、骨盤の傾きを評価します。
呼吸のリズムや、吸気・呼気での肋骨の動きも重要な指標です。
ここで、「どこが硬く、どこが動きすぎているのか」を正確に見立てます。
② 整える(徒手的アプローチ)
評価結果に基づき、胸郭・肩甲骨・肩前面・骨盤周囲を中心に徒手療法を行います。
具体的には、
- 前胸部(大胸筋・小胸筋・肋間筋)の筋膜リリース
- 肩甲下筋・広背筋・後方関節包のモビライゼーション
- 胸椎伸展を引き出す椎間リリース
- 骨盤前後傾を誘導する関節モビライゼーション
といった繊細な手技を用いて、胸郭の可動と肩甲骨の滑走を回復させます。
③ 再教育
次に、整った状態で「正しい動きを脳に覚えさせる」ステップです。
呼吸に合わせた胸郭の拡張練習、肩甲骨の下方回旋や後傾運動、
外腹斜筋と前鋸筋の協調トレーニングなどを行い、
姿勢保持の“自動制御”を取り戻します。
ここでは、意識ではなく、感覚で姿勢を感じられることが重要です。
④ 動作改善
最後に、日常生活や仕事環境に合わせて「崩れにくい姿勢」を定着させます。
デスクやスマホ使用時の姿勢指導、椅子やモニターの高さ調整、
睡眠姿勢の見直しなど、再発防止の具体策も提案します。
1回で劇的に変えるよりも、正しい姿勢を身体に“定着”させることを目指します。
■ 「胸を張る」ではなく「胸を開く」へ
多くの方が、「姿勢を良くしよう」とすると、無理に胸を張ってしまいます。
しかしそれは、背中を緊張させているだけで、根本的には改善しません。
大切なのは、胸郭が自然に開ける状態を作ること。
呼吸と連動した胸郭の動きが戻ると、肩はスッと開き、首が長く見えるようになります。
筋肉を固めるのではなく、骨格の流れに沿って“戻していくのです。
■ 猫背改善のその先にあるもの
姿勢が整うと、見た目の印象だけでなく、呼吸・代謝・睡眠の質も向上します。
さらに、肩こりや頭痛の改善、パフォーマンスの向上など、
“全身が軽く動く”という実感につながります。
「胸を開くと、気持ちも開く」——これは、心理的にも証明されています。
姿勢を変えることは、生活の質そのものを変えること。
もし、「姿勢を意識してもすぐ戻る」と感じているなら、
それはあなたの努力が足りないのではなく、身体が動ける状態になっていないだけです。
整えて、正しく使い、動作を変える。
それが、フィジオリハが考える“本質的な姿勢改善”です。


